海水による金属材料の腐食への対策は産業界にとって長年の大きな課題となっています。この課題に対し、ヨコタが数多くの実績と経験を基に開発した高耐食合金
YST130N(二相ステンレス合金)は、驚異的な耐海水性を示します。又、地熱発電所、温泉等の腐食性熱水、その他広範囲な液質にも優れた耐食性があります。
特長
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海水環境中で、極めて優れた耐隙間腐食性、耐孔食性を示します。
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一般薬液に対しても優れた耐食性を発揮します。
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優れた耐摩耗性により、砂、スラリーなどを含有する海水に対しても好適性を示します。
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熱に強く高温に耐えます。
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鋳造品であり、あらゆる形状の製作が可能です。
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被覆アーク、TIG 溶接により予熱、後熱の必要なく容易に溶接ができます。
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磁性を持っているので磁石で選別して回収することもできます。
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以上より、設備費、メンテナンス費の大幅なコスト削減ができます。
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豆知識その1
現在、海水ポンプ部品の多くは、ステンレス鋼とねずみ鋳鉄で造られています。ねずみ鋳鉄ポンプの場合はメンテナンスが面倒なため、次第にステンレス鋼の占める割合が増加しています。
しかし、一般的なステンレス鋼では依然として隙間腐食、孔食等の局部腐食が多く発生しています。隙間腐食と孔食とは類似した現象ですが、隙間が存在する装置においては、隙間腐食の方が孔食より発生しやすくなります。
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海水以外の各種の液に対する耐食性
YST130N は、海水のみならず、温泉水、腐食性熱水、化学液など広範囲の腐食液に対しても驚異的な耐食性を発揮します。
これまで次のような耐食性比較テストが各地で行われており、そのいずれもが YST130N の高耐食性を実証しています。
YST130N は、耐食性が最も高い材料として従来から知られているハステロイ C 相当品などと比較しても全く遜色ない性能で、しかもコストが割安であることから、その圧倒的に良いコストパフォーマンスが好評をいただいています。
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草津温泉における実液試験
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群馬県草津温泉は、硫化水素を含む酸性泉として有名であり、一般材質のポンプではすぐに腐食します。
この環境下で、各種材質の耐食性比較テストおよび YST130N 製ポンプの運転テストを行いました。
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草津温泉の泉質 |
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泉 温
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94.2 ℃
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PH
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l.7
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泉 質
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酸性-塩化物、硫酸塩温泉
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主要成分
(mg/kg)
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陽イオン
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ナトリウムイオン
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149
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マグネシウムイオン
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57.9
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カルシウムイオン
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93.2
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陰イオン
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塩素イオン
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901
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硫酸イオン
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826
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溶存ガス
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遊離硫化水素
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0.3
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(1)温泉池におけるテストピース浸漬テスト(テスト期間:1999.5.26~1999.12.2) |
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テスト状況
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テスト結果【腐食による損傷度】
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各材質の腐食度を比較すると YST130N が最も耐食性に優れていることがわかります。
(2)温泉ポンプ室におけるポンプ実機テスト(稼動期間:2000.3.6~2000.9.6) |
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テストポンプ
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テストポンプ外観
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型 式
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ヨコタ渦巻ポンプ UEN-0420
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仕 様
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6m3/h x 55m x 3000min-1 x 5.5kW
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材 質
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YST130N
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軸 封
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グランドパッキン
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運転時間
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4,416時間(2000.3.6~2000.9.6)
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期間経過後の開放点検写真 |
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ケーシング
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吸込カバー
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羽根車 表側 |
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羽根車 裏側 |
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YST130N 製ポンプは、写真の通り腐食も無く、本温泉に極めて好適であることが実証されました。
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皆生温泉におけるポンプ実機稼動
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鳥取県皆生温泉は、食塩泉として有名であり、一般材質のポンプではすぐに腐食します。
この環境下で長年にわたって使用されてきた YST130N 製ポンプは、そのいずれもが 10年以上経過しても腐食無く、順調に稼動を続けており、本温泉にも極めて好適であることが実証されています。
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皆生温泉の泉質
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ポンプ実機稼動結果
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泉 温
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79.8℃
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泉 質
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ナトリウム、カルシウム塩化物泉
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主要成分
(mg/kg)
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陽イオン
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ナトリウムイオン
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2156
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マグネシウムイオン
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40
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カルシウムイオン
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1658
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陰イオン
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塩素イオン
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5846
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硫酸イオン
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669.8
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ポンプ型式
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ヨコタ自吸渦巻ポンプ UHN 型
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口 径
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40-100mm
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材 質
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YST130N
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軸 封
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グランドパッキン
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稼動台数
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34台(1980年より納入開始)
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稼動結果
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10年以上経過しても腐食は無し
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ゴミ焼却場の有害ガス除去装置における実液試験
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ゴミ焼却中に発生する有害ガス(塩化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物など)を除去する装置の一例として、有害ガスに苛性ソーダ液 (NaOH) を噴霧して有害成分を捕集する「有害ガス除去装置」があります。この装置内部は腐食しやすい過酷な環境下にあります。
この装置内で、ノズルから噴霧される苛性ソーダ液と通過ガスの両方に晒されるように、各種材質のテストピースを吊り下げて、各材質の耐食性を比較検証しました。
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テスト状況
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テスト場所
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H市環境局A工場
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テスト装置
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ゴミ焼却「有害ガス除去装置」
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テスト条件
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排気ガス:260℃、HCl、SO3
液体:70℃、NaOH 8%、PH 7~8
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浸漬時間
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9,288時間(387日)
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テストピースの吊り下げ状況
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テスト結果【腐食・摩耗による損傷度】
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SCS10 および SUS316 は、腐食により金属表面が白濁しています。
YST130N およびハステロイC 相当品は、金属光沢が残っており、本設備に適合するものと判断されます。
特に YST130N の優秀さが際立っています。
なお、この損傷度には各テストピース同士の擦れ合いによる摩耗も含まれていることから、YST130N の強度が極めて高いことも同時に実証されました。
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し尿処理場の脱臭装置(アルカリ洗浄塔)における実液試験
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し尿処理中に発生するガスの悪臭を除去する装置の一例として、ガスを酸洗浄塔、アルカリ洗浄塔、活性炭吸着塔の順に通過させて脱臭する「脱臭装置」があります。この装置内部は腐食しやすく、特に次亜塩素酸ソーダ
(NaClO) を用いるアルカリ洗浄塔は極めて過酷な環境下にあります。
このアルカリ洗浄塔内に、各種材質のテストピースを浸漬して、各材質の耐食性を比較検証しました。
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テスト状況
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テスト結果【腐食による損傷度】
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テスト場所
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H市環境局D処理場
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テスト装置
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し尿処理「脱臭装置」アルカリ洗浄塔
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テスト条件
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液体:20℃、NaClO 12% + NaOH 25%、PH 8~9
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浸漬時間
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6,660時間(278日)
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SUS316 は、腐食により金属表面が白濁し、線状にピッチングが進行しています。
YST130N およびハステロイC 相当品は、金属光沢が残っており、本設備に適合するものと判断されます。
特に YST130N の優秀さが際立っています。
以上の各種試験結果から、ヨコタ二相ステンレス合金 YST130N は、海水はもちろんのこと、温泉水、腐食性熱水、化学液、腐食ガスに対しても極めて耐食性が高いことが実証されました。
豆知識その2
二相ステンレス合金とは、オーステナイト(白色部)とフェライト(灰色部)と呼ばれる二種類の組織で構成されるステンレス鋼です。
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耐食・耐摩耗性等の詳細についてはこちらをご覧ください。
納入実績
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